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「契約社員」の無期転換制度・雇止め法理について

HiELCC相談員を務めております弁護士の 鈴谷 通 です。

  先日(令和5年8月24日)、「パート・有期雇用労働者に関する基礎知識」というテーマでセミナーを担当いたしましたので、その内容のうち、有期雇用労働者(いわゆる契約社員)に関する無期転換制度(労契法18条)と雇止め法理(労契法19条)の基本的な考え方について、ごく簡単に説明いたします。

なお、上記セミナーで扱った内容のうち「同一労働同一賃金の原則」については、同一テーマを扱った山崎義明先生のコラム(「パートタイム・有期雇用労働者に対する不合理な待遇差とは?その1」、同「その2」)が既に掲載されていますので、そちらをご参照下さい。

長らく有期雇用労働者(=期間の定めのある労働者、以下本コラムでは「契約社員」といいます。)は「雇用の調整弁」と扱われてきました。会社から見て、期間の定めがない正社員は簡単に解雇することはできませんが(解雇権濫用法理、労契法16条)、期間の定めがある契約社員は契約期間が満了すれば自動的に退職とすることができるからです。景気がよいときは、契約を更新して契約社員に働いてもらい、ひとたび景気が悪くなれば、契約を更新せずに辞めてもらう。会社にとってみれば、ある意味、契約社員はとても「都合がよい」存在でした。

とはいえ、契約社員にしてみれば、会社で働き続けられるかどうかは生活に直結しますので、会社の都合だけで簡単に判断されてはたちまち生活に困ってしまいます。契約社員はいつ職を失うかわからない不安定な立場に置かれているため、何らかの保護が必要だと考えられました。

そこで、長年かかって裁判所が打ち立てた判例法理が「雇止め法理」です。
すなわち、裁判所は、

① 有期労働契約が反復更新されて実質的には無期契約と同視できる場合(実質的無期型)
② 労働者が契約を更新してもらえると期待する合理的な理由がある場合(期待保護型)

のいずれかに該当する場合は、契約期間満了を理由として直ちに退職扱いするのではなく、
正社員を解雇する場合と同様に扱うべきである、としたのです。

この「雇止め法理」は、現在、労働契約法第19条として条文化されています。

 そして、その後、立法は、不安定な立場に置かれる契約社員を保護するためのより明確なルールを制定することにしました。それが「無期転換制度」(労契法18条)です。

 制度をおおざっぱに説明すると「契約社員の労働期間が契約更新によって通算5年を超えることになった場合、その契約社員が希望すれば、契約期間の限定がなくなり、期間の定めのない労働者となることができる」というものです。

 契約社員がこの無期転換権を行使すれば、「次に契約が更新されるかわからない」という不安定な状態からは脱することができます。

 両制度の適用関係については、ある契約社員が無期転換権を取得している場合は同制度に基づく無期転換が明確に認められることになりますが、仮に無期転換権までは取得していない場合であっても、①実質的無期型や②期待保護型に該当する場合は「雇止め法理」の適用があることになります。 詳しくは、HiELCCが開催する「無料」セミナーにご参加いただくか、ご遠慮なくHiELCCまでお問合せ下さい。広島県・今治市雇用労働相談センターでは、月曜から金曜の9時から17時まで、無料相談を受け付けております。